テンマクとのコラボレーションで、「旅するジャケット」ができあがった。
名前は、『Ramblin’ Jack Jacket(ランブリンジャック・ジャケット)』。
さすらい(ランブリン)のジャック・ケルアックを気取って、現代の「路上」を旅するならどんなアウターを着るか、に思いを巡らすことで生まれてきたジャケットだ。
とすれば、生地は天然素材しか考えられない。厚手のコットンだな。
デザインは、シンプルがいちばん。古くからあるフィールドコートをイメージした。
なによりも、頭を悩ませたのが、染料だ。なんせ、一生つきあうジャケットを作りたいのだから。
当たり前のことだけど、天然染料にこだわりたい。
藍などの草木染か。はたまた、泥染めか。
で、いきついた先が「柿渋染め」だったのだ。
柿渋は、青柿から作られる日本古来の天然染料であり、塗料だった。
補強、抗菌、防腐、防虫、防水などの効果があり、しかも簡単に手に入る材料から作ることができる。
柱などの建築材料や家具、それに樽や桶などの生活道具の塗料として親しまれてきた。
また、染料としては、酒作りの袋、漁網などに使われてきた。
「きた」と過去形で書くのは、いまでは、だれからも見向きされなくなってしまったからだ。
柿渋を選ぶにあたって、木で作った家財道具に塗ってみたり、手持ちの古いウェアを染めてみたりもした。
ぼくが「旅するジャケット」に柿渋染めを選んだのは、古い染料にスポットライトを当てよう、という気持ちからではない。
「古くから受け継がれてきた生活の知恵」を、身をもって知りたいと思ったからだ。
天然素材のウェアは、着るほどに身体になじむ。
そして柿渋染めの生地は、着るほどに色が落ちついてくる。自分の歴史は自分で作るのだ、ということを認識させてくれる染料である。
これこそが、「味」となる。
これを作ったのは、「転がり続ける」という、ぼくの意思表示でもある。
ジャケットに袖をとおすたび、風が吹いていた旅の物語が聴こえてくる。
そんなウェアになればいいな、と思っている。
だから、このジャケットを手にしたのなら、すり切れるまで着て欲しい。
タフな生地と優雅な染めが、ぼくの旅、そしてきみの旅にもとことんつきあってくれるはずだ。
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