昔の西部劇映画では、決闘シーンの後、死んだ悪党の身丈サイズを測る、棺桶作りの男がよく登場した。たいていは、気の弱そうな小ぶりな男だ。
正義の保安官や、自由に旅をする早撃ちガンマンにあこがれつつも、タフでハードなあの時代の西部で、実際に暮らすとなると、僕ごときの人間は、棺桶作りの男がお似合いなんだろうな、とそのシーンを観るたび思ったものだ。
だから、というわけじゃないけど、棺桶を作ったのだ。
自分用にしては、かなり小さめだ。
去年の暮れ(2021年12月)、ひょんなことから、古い古いヴィンテージ・ウクレレ(Martin ukulele style 1)を手に入れた。
100年ぐらい前に、アメリカで作られたウクレレらしい。詳しいことはわからない。シリアルナンバーもないし、資料もない(もしかしたら、古いウクレレに巧妙に見せかけた偽物かもしれない)。
新年早々、「このウクレレに似合うケースを作ろう!」と、僕は思い立ったのだ。
で、思いついたのが、棺桶デザイン。
コフィン(棺桶)ケースと呼ばれ、ギターやバンジョーケースとして、アメリカの雑誌などでいくつもの写真を見たことがあった。
それを真似て作ることにしたのだ。
使う材は、桐にした。
僕の親父が死んだとき、葬儀屋とのもろもろの相談で、棺桶を選ぶ段になって、素材を桐にしてもらったことを思い出したからだ。
あとは、作りながら「どうしよう、こうしよう」と、いつものように右往左往てんやわんやの作業を進めた。
しかし、こうしてできあがってみると、われながら上出来!
これなら、荒れくれ男たちに囲まれ日々怯えながらも、棺桶作り職人として、西部の小さな街で自信をもって生きていけそうな気がしてきた。
生きる勇気を与えてくれる「棺桶」作りなのであった。