棺桶作りに没頭した2か月だった

棺桶作りに没頭した2か月だった

年が明けてから、ほんの少しずつ作り続けていたものがあった。 なんと「棺桶」である。 自分用にしては、かなり小さめだけど。

昔の西部劇映画では、決闘シーンの後、死んだ悪党の身丈サイズを測る、棺桶作りの男がよく登場した。たいていは、気の弱そうな小ぶりな男だ。 正義の保安官や、自由に旅をする早撃ちガンマンにあこがれつつも、タフでハードなあの時代の […]

昔の西部劇映画では、決闘シーンの後、死んだ悪党の身丈サイズを測る、棺桶作りの男がよく登場した。たいていは、気の弱そうな小ぶりな男だ。
正義の保安官や、自由に旅をする早撃ちガンマンにあこがれつつも、タフでハードなあの時代の西部で、実際に暮らすとなると、僕ごときの人間は、棺桶作りの男がお似合いなんだろうな、とそのシーンを観るたび思ったものだ。

だから、というわけじゃないけど、棺桶を作ったのだ。
自分用にしては、かなり小さめだ。

桐の材木をサイズに合わせて切る。が、棺桶は正長方体ではないので、接続部の角度合わせが大変だった。これも作りはじめてから気がついたこと。計算外だったなぁ。

去年の暮れ(2021年12月)、ひょんなことから、古い古いヴィンテージ・ウクレレ(Martin ukulele style 1)を手に入れた。
100年ぐらい前に、アメリカで作られたウクレレらしい。詳しいことはわからない。シリアルナンバーもないし、資料もない(もしかしたら、古いウクレレに巧妙に見せかけた偽物かもしれない)。

蓋は、箱のようにかぶせるタイプとした。薄い檜の板を曲げることで、蓋のへりとした。

新年早々、「このウクレレに似合うケースを作ろう!」と、僕は思い立ったのだ。
で、思いついたのが、棺桶デザイン。
コフィン(棺桶)ケースと呼ばれ、ギターやバンジョーケースとして、アメリカの雑誌などでいくつもの写真を見たことがあった。
それを真似て作ることにしたのだ。

蓋を止めるのは、止め金ではなく、アコースティックギターのブリッジピンを差し込む加工にした。

使う材は、桐にした。
僕の親父が死んだとき、葬儀屋とのもろもろの相談で、棺桶を選ぶ段になって、素材を桐にしてもらったことを思い出したからだ。

持ち手は、本革で。塗装は、柿渋とオイルで。

あとは、作りながら「どうしよう、こうしよう」と、いつものように右往左往てんやわんやの作業を進めた。
しかし、こうしてできあがってみると、われながら上出来!

十字架を描こうかと思ったけど、彫刻刀で彫ることにした。彫る作業は、失敗したら取り返しがつかない。どきどきの瞬間である。「堀田が彫った」十字架。

これなら、荒れくれ男たちに囲まれ日々怯えながらも、棺桶作り職人として、西部の小さな街で自信をもって生きていけそうな気がしてきた。
生きる勇気を与えてくれる「棺桶」作りなのであった。

内側には、クッション材を内側にしき、その上にベルベット(ビロード)を貼ってみた。ベルベットの和名は、天鵞絨(てんがじゅう)というらしい。

足かけ2か月。ついにできた、ウクレレ・コフィンケース。
さて、これを持ってライブハウスへ行くかな!