啓蟄を過ぎたと思ったら、一気に春めいてきた東京だ。
サクラも満開。
夜中にはネコが妙な声で鳴くし、土手にはツクシが顔を出しはじめたし。
街を歩くと、上着を脱いだ人の姿に、なにやら「胸騒ぎ」の春である。
川の中も同じだ。
魚たちも、ざわざわと落ち着かない様子なのだ。
水棲昆虫たちが動きはじめ、陸棲昆虫も出始める。と、魚たちは浮き浮きだ。
渓流釣り師にとっては、すべてが上の空になる季節がやってきたのだ。
『WILD-1(ワイルドワン)多摩ニュータウン店』のフィッシング・コーナーでは、角田くんがそわそわしている。
自分自身も釣りへ行きたいし、お客さんにもいろんな情報を伝えたい。
そこで、テンカラフィッシングの話を聞いてみた。
「釣りだけでなくほかの遊びと複合させて、テンカラ釣りを楽しんでいる人が増えている」という。
「キャンプ場へ行くときや、縦走するときなど、テンカラロッドを持っていくという人が多いですよ。最近は」
ぼくも、そういうスタイルが大好きだ。
釣り好きは、車にフィッシングギアを積みっぱなし、というのはよく聞く話だ。が、最近は、山を歩く人がテンカラロッドをバックパックに忍ばせる、という。
「テンカラは、道具がシンプルで少ないですからね」、と角田くん。
さらに「ウェーダーやウェーディングシューズなども、軽量でコンパクトになるものが多く出てきました。こうした道具が充実してきたのも、ありがたいです」
渓流釣りは、ますます軽量でコンパクトな道具が注目を集めているようだ。
「50センチ前後におさまる、という道具が、これからもどんどん出てくると思います。もともとテンカラは、シンプルです。シンプルなスタイルの、先駆け的な釣りですからね」
角田くんにいろんな話を聞いていたら、テンカラロッドを手に、渓流をどんどん歩いていきたくなってきた。
「ようし! 初夏になったら、山歩きテンカラ釣りへ行こう。どこがいい?」と、わたくし。
「わかりました。行きましょう。とっておきの場所へ」と、角田くん。
初夏が待ち遠しい日々なのだ。