石窯を造ったら、食べる番である。
この夜のために、数々の重労働に耐えてきたのだ。働いたものは、食えるのだ。
というわけで、キャンプ場の管理人・大ちゃんがいろんな料理を作ってくれた。大ちゃんは、管理人でもあるんだけど、もともとは料理人だ。
山へも登らないし、カヌーで川へも行かないけど、厨房に立って中華鍋を持たせたら、ぼくのパドルさばきよりは圧倒的に魅力的だ。
もっとも、ぼくがパドルを振りまわしてもカヌーが前に進むだけでなにも生み出しはしないが、大ちゃんが中華鍋を揺すると、手品のようにいろんなものがお皿に並ぶ。湯気を上げながら。
その料理を食べては、「パドルより、中華鍋のほうが現実的だなぁ」と、つぶやくわたくしなのであった。
その大ちゃんも、「石窯料理ははじめて」というけど、歴戦をこなしてきた男だ(ここは「男」ではなく、「漢」と書くべきか)。
まかせておけばだいじょうぶ。
というわけで、その夜、ピザからはじまった石窯フルコースは、どしどしがつがつと進んだのだ。
ピザだって、生地から手作りだ。ローストビーフもなんとかポークも、下ごしらえがしっかりしている。ワインがすすむ。
途中からは、写真も撮り忘れてしまううまさである。
「そうだ。ほら、あの、なんか、スープの上がパイで囲まれているやつ。あれ、作ってよ」とリクエストしたら、つぎに訪れたときには想像通りのものを作ってくれた。
こんな暮らしができるのなら、わが家にも石窯が欲しい。
そして、石窯には大ちゃんが必要だ。
今度は、パエリアを頼んでみよう。それに、焼きリンゴもいいな。一晩中、石窯に入れっぱなしにして作る煮込み料理もうまそうだ。
明日から、また南足柄へ行くかな。