もし僕がオリジナルグッズを作るなら、『永久保証』にしたいと思っている。
壊れない自信がある、ということではない。修理ができる、ということだ。
手塩にかけて世に送り出した道具なんだから、長く使ってほしい。できることなら一生使ってほしい。なので、とことん修理して使えるようなものがいい。
そう、僕が子どものころは靴下に穴があいたら、お袋が端切れ布でつぎあてをしてくれたように。
そんなふうに、つねづね思っていたのだ。
すると……。
「うちの寝袋は、永久保証でっせ」と、関西弁が聞こえてきた。
「ん?」と振り返ると、坊主頭の眼鏡男が人のいい顔で笑っている。
「おおお。『モモンガ』の横ぞうやないか」
「いえ。『ナンガ』の横田です」
そうであった。『ナンガ』の横田敬三だったのだ。
滋賀県米原市にある羽毛製品メーカー『ナンガ』。
ダウン(羽毛)の寝袋やジャケット&パンツを「メイド・イン・ジャパン」にこだわり、製造販売しているのだ。
ことの起こりは、昭和16年。
横田駒三(こまぞう)が、滋賀県で布団製造をはじめる。その後、綿々と布団を作り続け、二代目・横田晃(あきら)があとを継ぐ。
そのころから、寝袋の下請け製造をはじめる。また、防災用品なども作っていた、という。
ところが高度成長期へ入ると、コストを下げるため様々な製造物は外国産へと移っていく。布団も、寝袋も。
そこで世界の流れを逆手に取るように、メイド・イン・ジャパンでいくことにしたのだ。
縫製のノウハウはある。ダウンのノウハウも持っている。ダウンの仕入れ先もあった。
横田晃は、長年の布団製造で培ってきた技術を寝袋作りにいかし、アウトドア業界へ注力しはじめた。
平成7年には、ヒマラヤにある高峰“ナンガバルバット”を由来とした『ナンガ』に社名を変更。
そして、平成21年には横田智之があとを継ぎ、横田敬三(専務取締役)との兄弟での現体制となった。
ふたりは、ダウンの品質管理から洗浄・精製。生地の選択、縫製など、「メイド・イン・ジャパン」のダウン製品メーカーとして、さらなるこだわりを反映させていく。
「だまそうと思えばいくらでもだませるから、ダウン製品は。だからこそ、そこは正直にいきたい」と、横田敬三。
「それに自社工場で作っているから、小回りがきく。自分のところで修理ができるから、自信をもって『永久保証』をうたえる」とも。
信頼のおけるダウンが包まれた寝袋は、その安心感もまた暖かさとなる。
僕たちの安眠を見守る『ナンガ』なのである。
この冬、荒野でもいい夢を見るために、僕は『ナンガ』にくるまっている。
★『ナンガ』HP=http://nanga-schlaf.com/