冬の夜遊び~ウラヤマを舞うムササビを探しに

冬の夜遊び~ウラヤマを舞うムササビを探しに

天気のいい夜には、温かい飲み物を持って暖かいウェアに身を包んで、ウラヤマへ出かけていこう。 そして、上を向いて歩くのだ。 木々の葉が落ちてしまう冬の森は見通しがいいから、夜を遊ぶムササビに逢うことができるぞ!

ぼくは、ムササビに生まれるべきだった。 いや。年頭なのだから今年の抱負として、「これからは、ムササビのように生きる!」と宣言するほうがいいかもしれない。 とはいえ、ぼくがムササビのように生きたいと思ったのは、もう三十年近 […]

ぼくは、ムササビに生まれるべきだった。
いや。年頭なのだから今年の抱負として、「これからは、ムササビのように生きる!」と宣言するほうがいいかもしれない。
とはいえ、ぼくがムササビのように生きたいと思ったのは、もう三十年近くも前のことなのだ。
はじめて野生のムササビを見たときから、ぼくのムササビ熱ははじまり、いまになっても冷めることがない。そんなやつなのだよ。ムササビってやつは。

ウラヤマでのある日、うっかりもののムササビが日中に樹洞から顔を出した。ぼくも驚いたが、ぼくと目があったムササビはもっと驚いていた。しばらくは眠い目をこすって困り顔をしていたが、やがて樹洞の奥深くへもぐり、またまた寝てしまったようだ。

ウラヤマでのある日、うっかりもののムササビが日中に樹洞から顔を出した。ぼくも驚いたが、ぼくと目があったムササビはもっと驚いていた。しばらくは眠い目をこすって困り顔をしていたが、やがて樹洞の奥深くへもぐり、またまた寝てしまったようだ。

ムササビは、本州、四国、九州に生息する日本固有種のほ乳類だ(北海道や本州の高地には、ひとまわり小さいモモンガが棲む)。夜行性とはいえ、昔から日本人とはかかわりの深い動物なのだ。
鞍馬寺の天狗伝説はムササビから生まれた、といわれている。ムササビと遭遇した昔日の人は、正体不明の物体を天狗と名づけたのだ。
それに、ムササビは直径3ミリ前後の正露丸のような糞を樹の上から降らせる。それらが葉っぱに当たるとバラバラと音がする。これが妖怪『砂かけばばあ』の正体だったのでは、ともいわれている。

ムササビはベジタリアンである。葉を半分に折って食べる習性があるので、囓られた葉っぱは左右対称に。ムササビの多い山には、こうした葉っぱが何枚も落ちている。 ほかにも、新芽がついていた枝、芯だけの松の実、おしべだけが食べられたツバキのつぼみなどが落ちていることも。

ムササビはベジタリアンである。葉を半分に折って食べる習性があるので、囓られた葉っぱは左右対称に。ムササビの多い山には、こうした葉っぱが何枚も落ちている。
ほかにも、新芽がついていた枝、芯だけの松の実、おしべだけが食べられたツバキのつぼみなどが落ちていることも。

 

直径2~3ミリぐらいの正露丸のような糞が見つかることも。

直径2~3ミリぐらいの正露丸のような糞が見つかることも。

ムササビと出会うにはちょっとしたコツがいる。が、そのコツさえ知ってしまえば、いろんな場所で遭遇できるのだ。
「こんなところに!」と思うほど、人の生活圏に意外と近い里山に棲む動物である。
が、夜行性の動物である。見ることができるのは、あたりまえのことながら夜だ。
とはいっても、暗くなってからやみくもに探すわけではない。明るい時間に、まずは下調べである。
大きな木には、あちこちに穴があいている。ムササビはそうした樹洞に暮らす動物だ。直径が7センチ前後あれば、ムササビは出入りできる。
まずは、いかにも動物がひそんでいそうな樹洞を探すのだ。
そうした樹洞を見つけたなら、穴の周りを注意深く見る。木の皮がはがれていることがある。ムササビが出入りするとき、爪で引っかかれた跡だ。
さらには、そのすぐ下の地面を凝視する。正露丸のような、黒い糞を見つけることができるかもしれない。
そうした痕跡を見つけたなら、ムササビが棲む確率が高い。
その木の下で、日没までじっと待つのだ。

夜のほ乳類ウォッチングには、ライトに赤いセロファン紙をかぶせること。彼らにとって、白い光は刺激的すぎる。ぼくはライトのひとつをムササビウォッチング専用にし、赤いセルロイドを丸く切って装着している。

夜のほ乳類ウォッチングには、ライトに赤いセロファン紙をかぶせること。彼らにとって、白い光は刺激的すぎる。ぼくはライトのひとつをムササビウォッチング専用にし、赤いセルロイドを丸く切って装着している。

日没後、30分ほど。いよいよムササビくんのお目覚めである。
顔に白い模様をもつムササビが穴から顔を出す。巣穴から顔だけを覗かせ、しばし外をうかがっている。
が、このときむやみに光を当てると、いやがって(かどうかはさだかじゃないけど)しばらく巣穴にこもってしまうことがある。また、ときにはフリーズしたかのように、じっとしてしまうことも。
夜行性動物にとって、光というのはきわめて邪悪なものなんだろう。

マイルストーンのヘッドライト「MS-B1」は、サブライトとして赤色LEDが搭載されている。赤色LEDは暗闇に慣れた目にやさしく、手元灯としてテント内などで使いやすい。ムササビにもやさしいのである。

マイルストーンのヘッドライト「MS-B1」は、サブライトとして赤色LEDが搭載されている。赤色LEDは暗闇に慣れた目にやさしく、手元灯としてテント内などで使いやすい。ムササビにもやさしいのである。

巣穴から出たムササビは、「グルルルー」とけっして上品とはいえないような鳴き声を上げ、がに股気味の後ろ足を蹴るように動かし幹を駈けのぼる。そして、みずからの夜遊びの場所へ向かって、滑空していく。
その姿は美しい。
滑空の速度は、夜空にぼんやりとした残像を残すほどゆったりしている。
小さなテーブルをはさんだカップルが、熱いコーヒーを手に、昨日のできごとを語りあっているようなスピードである。

神奈川県南足柄の「ez BBQ country」キャンプ場で、一年に一度「ムササビネスト(巣箱)作り」のイベントをおこなっている。作った巣箱は、キャンプ場周辺の森に設置。去年あたりから、ムササビが頻繁に訪れるようになってきた。 ムササビが舞うキャンプ場なのだ! HP(http://www.ezbbq.com/country/)内の「スタッフブログ」には、キャンプ場から撮ったムササビの動画もアップされている。

神奈川県南足柄の「ez BBQ country」キャンプ場で、一年に一度「ムササビネスト(巣箱)作り」のイベントをおこなっている。作った巣箱は、キャンプ場周辺の森に設置。去年あたりから、ムササビが頻繁に訪れるようになってきた。
ムササビが舞うキャンプ場なのだ!
HP(http://www.ezbbq.com/country/)内の「スタッフブログ」には、キャンプ場から撮ったムササビの動画もアップされている。

それはそうと、運よくムササビが棲む樹洞を見つけても、いつもそこにムササビがいるとは限らない。
ムササビは、決まった家をもたない習性なのだ。
夜行性で、空を飛ぶことができ、決まったねぐらをもたない。
夜型で、自由で、放浪癖をもちあわせている。
そんなムササビの生活をのぞき見ると、ぼくだけではなく、だれもが「ムササビのように暮らしたい」と思うはずだ。
男の望むもの(たぶん、女も!)の三つを合わせもっているのだ。

もし、そんな暮らしがおもしろそうだと思ったなら、いっしょにウラヤマへムササビを探しにいかないか。
案内するから!

ムササビは前後の足の間に飛膜があり、木から木へとグライダーのように滑空する。 「こらっ。そこの黒いエルグランド。エンジンかけっぱなしで車中泊をするな!」とか。 「いつも熊鈴をヂャリヂャリ鳴らしながら山を歩くんじゃない。山の静寂を楽しんでる人もいるのだから」とか。 「明るすぎる国の未来は暗い」とか。 人間社会を木から見下ろし、今夜もため息をついているのだ。 (イラスト by 絵梨香)

ムササビは前後の足の間に飛膜があり、木から木へとグライダーのように滑空する。
「こらっ。そこの黒いワンボックス。エンジンかけっぱなしで車中泊をするな!」とか。
「いつも熊鈴をヂャリヂャリ鳴らしながら山を歩くんじゃない。山の静寂を楽しんでる人もいるのだから」とか。
「明るすぎる国の未来は暗い」とか。
人間社会を木から見下ろし、今夜もため息をついているのだ。
(イラスト by 絵梨香)

 

◆キャンプイベント「ムササビの夜」 滋賀県高島市マキノ町で開催決定! ムササビつながりでなんだけど、毎年秋に栃木県男鹿の「ワイルドフィールズおじか」でおこなっているイベント「ムササビの夜」を、今年はマキノでも開催します。 ・2015年5月16日(土)~17日(日) 関西初見参です。よろしく! (詳細が決まりしだい、発表します)

◆キャンプイベント「ムササビの夜」
滋賀県高島市マキノ町で開催決定!
ムササビつながりでなんだけど、毎年秋に栃木県男鹿の「ワイルドフィールズおじか」でおこなっているイベント「ムササビの夜」を、今年はマキノでも開催します。
・2015年5月16日(土)~17日(日)
関西初見参です。よろしく!
(詳細が決まりしだい、発表します)