風景に溶けこんだ「家」で眠りたい

風景に溶けこんだ「家」で眠りたい

その日かぎりの「わが家」なんだから、テントまわりはとことんこだわろう。 「風景との調和」、「自然との融合」。 それらをテーマに、キャンプサイトを演出してみたい。

 キャンプには、大きくふたつのスタイルがある。  ひとつは、「もっともっと先へ進みたいから、キャンプ泊を繰りかえしながら荒野を旅する。ここより先へ進むためにテント泊をする」というスタイルだ。  もうひとつは、「自然を楽し […]

 キャンプには、大きくふたつのスタイルがある。
 ひとつは、「もっともっと先へ進みたいから、キャンプ泊を繰りかえしながら荒野を旅する。ここより先へ進むためにテント泊をする」というスタイルだ。
 もうひとつは、「自然を楽しみたいために外で泊まる」というスタイル。キャンプが目的のテント泊だ。
 どっちが正統派とか、どっちがいいとか。そんなことではない。

 若き日のぼくは、キャンプが目的のテント泊なんてありえない、と突っぱっていた。キャンプというのは、「ここ以外のどこかへ」行くためにやるものだ、と決めつけていた。キャンプが目的のテント泊なんて、飲食の場所を居酒屋から野外にかえただけじゃないか、と。
 とはいえ、キャンプが目的のテント泊もずいぶんとやってきたけど……。

ウッドのテーブル、帆布のチェア。キャンプサイトに自然素材の道具が並ぶと、心が落ちつく。

ウッドのテーブル、帆布のチェア。キャンプサイトに自然素材の道具が並ぶと、心が落ちつく。

 いうまでもなく、ふたつのスタイルは目的が違うのだから、いいか悪いかなんて比べようがない。
「ここより先へ進むため」のテント泊は、明日のためにぐっすり眠ることがいちばんの目的となるだろう。そして、「キャンプが目的のテント泊」なら、どれだけその日を楽しめるかが重要となってくるだろうし。

モノポールのテントは、その安定感から、風景との調和を不思議に感じさせる。形状が、人の心をくすぐるのだろうか。

モノポールのテントは、その安定感から、風景との調和を不思議に感じさせる。形状が、人の心をくすぐるのだろうか。

 ただ、どっちのスタイルにも、こだわりがほしい。
 こだわりを「遊び心」といいかえるとわかりやすいか。
 とくに、家族で出かける「キャンプが目的のテント泊」なら、テントサイトの演出にとことんこだわりたい。
 遊びなんだから、「実用」よりも「嗜好」を最優先したいのだ。
 ちょっと前まで、キャンプといえば野外料理、みたいな風潮があったけど(それはそれで「おいしい」から、いいのだが)、料理とともにテントサイトへのこだわりを強くもつと、楽しみが倍増する。
 とはいっても、派手派手しくするわけではない。
 テーブルや椅子をいくつも並べることではない。ランタンをいくつも吊るし、煌々としたサイトを作ろうといっているわけでもない。
 夜の暗さを楽しめる必要最小限の灯りと、自然に似合う道具とで演出したいのだ。

タープの下で食事をしたあと、条件がよければ、ここで寝てみるのも一興。壁のない野外泊は、いろんな恩恵を与えてくれる。

タープの下で食事をしたあと、条件がよければ、ここで寝てみるのも一興。壁のない野外泊は、いろんな恩恵を与えてくれる。

 どんなふうにやるか?
 それは、お父さんの腕のみせどころである。
 シンプルにしてエレガントな感性を盛りこむのだ。
 キャンプサイトが簡素で優雅に作られると、「風景との調和」、「自然との融合」が、その向こうに見えてくる。

いくつかのグループが集まってのキャンプなら、テント同士が会話をしているようなレイアウトが美しい。 (写真協力=「CielBleu」茨木一綺)

いくつかのグループが集まってのキャンプなら、テント同士が会話をしているようなレイアウトが美しい。
(写真協力=「CielBleu」茨木一綺)