キャンプには、大きくふたつのスタイルがある。
ひとつは、「もっともっと先へ進みたいから、キャンプ泊を繰りかえしながら荒野を旅する。ここより先へ進むためにテント泊をする」というスタイルだ。
もうひとつは、「自然を楽しみたいために外で泊まる」というスタイル。キャンプが目的のテント泊だ。
どっちが正統派とか、どっちがいいとか。そんなことではない。
若き日のぼくは、キャンプが目的のテント泊なんてありえない、と突っぱっていた。キャンプというのは、「ここ以外のどこかへ」行くためにやるものだ、と決めつけていた。キャンプが目的のテント泊なんて、飲食の場所を居酒屋から野外にかえただけじゃないか、と。
とはいえ、キャンプが目的のテント泊もずいぶんとやってきたけど……。
いうまでもなく、ふたつのスタイルは目的が違うのだから、いいか悪いかなんて比べようがない。
「ここより先へ進むため」のテント泊は、明日のためにぐっすり眠ることがいちばんの目的となるだろう。そして、「キャンプが目的のテント泊」なら、どれだけその日を楽しめるかが重要となってくるだろうし。
ただ、どっちのスタイルにも、こだわりがほしい。
こだわりを「遊び心」といいかえるとわかりやすいか。
とくに、家族で出かける「キャンプが目的のテント泊」なら、テントサイトの演出にとことんこだわりたい。
遊びなんだから、「実用」よりも「嗜好」を最優先したいのだ。
ちょっと前まで、キャンプといえば野外料理、みたいな風潮があったけど(それはそれで「おいしい」から、いいのだが)、料理とともにテントサイトへのこだわりを強くもつと、楽しみが倍増する。
とはいっても、派手派手しくするわけではない。
テーブルや椅子をいくつも並べることではない。ランタンをいくつも吊るし、煌々としたサイトを作ろうといっているわけでもない。
夜の暗さを楽しめる必要最小限の灯りと、自然に似合う道具とで演出したいのだ。
どんなふうにやるか?
それは、お父さんの腕のみせどころである。
シンプルにしてエレガントな感性を盛りこむのだ。
キャンプサイトが簡素で優雅に作られると、「風景との調和」、「自然との融合」が、その向こうに見えてくる。