晩秋の低山を歩くのが、大好きだ。
山に紅葉が終わるころ、トレイルは落ち葉におおわれる。
トレイルに積もった落ち葉を蹴散らすように、音をたてて歩くのだ。
「さらさら」という音は、ひとり歩きの淋しさを紛らわせてくれる。
そればかりか、山歩きの気分を高め、心を愉しませてくれるのだ。
今年も、そんな季節がやってきた。
そこで、アンプラグドな山旅へ出ることにした。
そんな一日にこだわりたいのは、装備だ。
まずは、晩秋の山旅に似合うウェア。
派手な色づかいじゃないだろ。
機能最優先の化学繊維じゃないだろ。
シャツはペンドルトンのバージンウールのシャツ。
アンダーは、アイベックスのウーリー。
ボトムスは、ノースフェイスの厚手のコットンパンツ。
そして、ブーツはダナーのマウンテンライト。
背中に、シライデザインの帆布リュック。
ギブソンの古い古いバンジョーウクレレも持っていこう。
頭には、アクシーズクインのウールのチロリアンハット。
手には、布袋竹の杖。
仕上げは、バブアーのオイルドジャケットだ。
仕上げに選んだバブアー(Barbour)のオイルドジャケット。
ぼくは(ぼくもまた、というべきか)、これをほとんど街着として使っている。
しかし、このジャケットの生い立ちを思いおこすと、やはり野外でこそ使ってやりたい。
1894年、ジョン・バブアーによりイングランド北東部のサウスシールズで創業されたバブアー。
北海の不順な天候の元で働く水夫や漁師、港湾労働者のために、オイルドクロスを提供したのがはじまりだったという。
その革新的なオイルドクロスの防水ジャケットは、耐久性が高く、またたく間にバブアーの名声を広めた。
そのすぐれた機能性と耐久性から、第一次、第二次世界大戦中には、イギリス軍に供給された、という。
真摯なものづくりとその品質が認められ、1974年にエディンバラ公より、1982年に女王陛下より、 1987年にはウェールズ皇太子殿下より、イギリス王室御用達(ロイヤル・ワラント)の栄誉を受けた。
そこで、一年にほんの数回だけど、しんどい季節の山旅へ着ていくことにしている。
このジャケットがもっているポテンシャルを、ちゃんと引きだしてやりたいからだ。
素材はヘビーなコットン生地。
その生地の上に、防水のためにオイルがしみこませてある。
防水性のは高く、本降りの雨でもだいじょうぶ。
なによりもうれしいのは、じょうぶさだ。
過去、小枝だらけの藪を歩きまわったりしてもだいじょうぶだし、斜面で滑り落ちたときもジャケットに傷がついただけだった(身体へのダメージは大きかったが……)。
そういえば、自転車でひっくり返ったときも、そのタフさを存分に見せてくれた(身体へのダメージは、かなり大きかったが……)。
現在の山旅では、風狂ないでたちかもしれない。
でも、とぼけた味わいにして、ヘビーデューティな心意気をもっている。
簡素で優雅で、ちょっとばかり不便な秋の一日を過ごしたいのだ。
こうしたスタイルは、はやらないかもしれないけど、不便を楽しむ旅こそがぜいたくにあふれている。
これこそが、ぼくが考えるところの「アンプラグドないでたち」なのである。