ひとりで飲む酒、などと書きだすと『演歌』の話でもはじまるのか、と思われてしまいそうだけど、そうじゃない。ひとり旅で飲むお酒の話だ。
ひとりで過ごすキャンプの夜には、小さな焚き火とちょっとばかりのお酒が欲しい(あくまでも「僕の場合」、ということだけど)。
たとえば……。
明日の朝からお気に入りの山へ登ろうと思いたったので、キャンプに適した秘密のトレイルヘッドまでカングーで行き、そこでのんびりと夜を待つ。歳とともに朝起きるのが早くなるというけど、僕はあいかわらず朝寝坊が好きだ。なので、前日に現場へ行き、そこでゆっくりと眠りたい。
今日やってきた秘密のトレイルヘッドには、耳にくすぐったい流れの渓流がある。初夏には日が暮れると、その川で生まれ育ったホタルが舞いはじめる。夜の闇が落ちはじめると、ムササビがいつもの巣穴から顔をのぞかせるはずだ。
そんな場所だ。
そしてそんなときには、こいつの出番である。
UNIFLAMEユニセラ熱燗あぶり台。
なつかしの『燗銅壺(かんどうこ)』である。
小さな焚き火台でもある。
江戸時代の粋な酒飲みは、お燗をしながら干物をあぶって、この前に座っていたのである(たぶん)。
「そちも、いっしょにどうじゃ?」とか。「もうちょっと近こうよれ」などと、酌をしてくれる美人に手を伸ばしたりしてたのだ(きっと)。
なるほど、燗銅壺は美女を口説くための道具だったのかもしれない。
そんな燗銅壺が、現代に復活した。
この『ユニセラ熱燗あぶり台』を、ユニセラTG-3本体と組み合わせると、燗銅壺になる(もっとも、本来の燗銅壺は銅板でできていたが、これはステンレス製)。
で、星空の下。一夜干しのイカをあぶりながら「今日は『ぬる燗』の気分だな」などと、ひとりの夜を楽しんでいるのだ。
さらには、ついつい調子に乗ってしまうと、「お酒はぬるめの燗がいい。肴はあぶったイカでいい」などと鼻歌が出てくる。
あれっ?
いつの間にか演歌になってしまったではないか……。