炭火焼きにまさるものはない。
かれこれ30年ほど前から、ぼくはそのことを信じて疑わない。
だから、秋になって初もののサンマを焼くのは、手間暇はかかるけどまず炭を熾したし、おいしい肉が手に入ったときも、迷わず炭火焼きの準備をはじめるのだった。
面倒くさがり屋のぼくが、唯一、働き者になるときかもしれない。
SOTOのバーベキューグリル『デュアルグリル』を手に入れた今秋、最初に焼いてみたかったのは、サンマでも肉でもなく、野菜と魚だった。
この道具に似合う、ちょっと「おとなのBBQ」を考えてみたい、と思ったのだ。
とはいっても、面倒なことは一切なし。
タルタルソースとわさびをまぜ、シイタケに乗せる。
サケの切り身に瓶詰めのエノキダケをまぶしたものをアルミホイルにくるむ。
大葉とネギもいっしょに。
たったそれだけのこと。
そんなシンプルな料理がこの『デュアルグリル』に似合うと思ったのだった。
このグリル、なんたってサイズ感がいい。
BBQといえば大人数で、というお祭り感より、炭火焼きにこだわりたい人が、ぐっと火のそばに近よって、というサイズなのだ。
そしてなによりうれしいのは、「火消しつぼ」機能。
吸気口を閉じ、蓋をすることで、火がついたままの炭を消火してくれる。
炭はそのまま次回に使えるのだ。
そうなのだ。
炭火焼きが好きになると、炭にもこだわりたくなってくる。
数年前、群馬県片品村の炭窯を訪れ、炭作りを目にしたときには、「火と暮らす」という文化をかいま見た気がした。
炭には、日本の文化と伝統が宿っているのだ。
それ以降、炭に火をつけるときには襟を正して、という気分になる。
BBQでは、できることなら備長炭のようないい炭を使いたい。
安価なマングローブの炭は、すぐに燃えてしまうし、南の島のマングローブを切り尽くしてしまうような気がするし。
心を込めて作られた炭は、目にも、耳にも、心にも、舌にもうれしいのだ。
炭火焼きの話を書いていると、よだれが出てきてしまった。
つぎの『デュアルグリル』の使う日を、考えてしまうのだ。
この週末は前から計画をしていたとおり、長野の山へきのこ狩りに出かけよう。
もちろん、この『デュアルグリル』を持って。
食通にはなれない「違いのわからない男」だし、大食漢になれるほどの勇気ももちあわせてはいないけど、天高く肥ゆるのは馬だけじゃないのだ!